問題点・導入の目的 国内外拠点で利用する文書共有・PLMシステムのための高速かつ安定した拠点間ネットワークの確立が急務に
株式会社山田製作所(以下、山田製作所)は、本田技研工業を主要顧客として二輪車、四輪車の機能部品の開発と生産、販売で事業を拡大してきました。現在は国内のほか中国、タイ、米国など海外にも生産・販売拠点を構え、国内主要メーカーのみならず海外の自動車メーカーにも大きく販路を広げています。
さらなる成長を目指す同社は2014年、さまざまな部品の機種や数量、生産スケジュールなど"開発テーマ"の管理に用いる文書共有システムを導入します。
ただし、国内サーバーで運用する文書共有システムに海外拠点からアクセスする唯一の手段は通常のインターネット回線を用いたSSL-VPNによる
リモート・アクセスであり、接続が不安定なことから通信の切断や遅延などの問題が頻繁に生じていました。これらに加えて、山田製作所には
拠点間ネットワーク接続の改善を急ぐべきもう1つの理由がありました。それはPLM(※)システムの導入です。
「製品開発の効率性を高めるために、PLMシステムの導入を予定していました。これは製品の設計図であるCADデータなど各種資料をグローバルの拠点で
一元管理するための基盤であり、それには国内外の拠点を高速かつ安定したネットワークで接続することが大前提でした」と開発本部 情報管理ブロックブロックマネージャー 山田 俊行氏は言います。
※PLM=Product Life cycle Management:製品ライフサイクル管理
解決方法の検討、決定/ベル・データからの提案 拠点間ネットワークを低コストで実現し、ソフトウェア・ライセンス料も抑えながら利用できるIBM Cloud ベアメタル・サーバー
文書共有システムとPLMシステムのための安定した拠点間ネットワークの実現を託された開発本部 情報管理ブロック研究員 齋藤 整氏は、 あるセミナーで聴講した同業者の事例講演で解決策のヒントを得ます。山田製作所が導入を予定するPLMシステムを利用していたその同業者は、 IBM Cloudを使うことによって国内外拠点の安定したネットワーク接続を低コストで実現したというのです。「このとき、IBM Cloudならばデータセンター 間プライベート・ネットワークの通信が無料であり、専用線を引くなど大規模な投資を行わなくても国内外の拠点間で品質の高いネットワーク接続 を実現できることを知りました。しかも、パブリック・クラウドなので手軽に始められ、私たちのような業務部門主導のプロジェクトにも向いていると感じました」と 齋藤氏は言います。 そこで、ホストマシン(IBM i (AS/400))の運用委託で付き合いがあり、IBM Cloudの販売からサポートまで提供している弊社に詳細の問い合わせをいただきました。 ベル・データではすでに数社のお客様に国内外の拠点間接続としてIBM Cloudを用いたソリューションをご提供しており、その経験から通常のインターネット回線を 使うよりも安定性とスピードが高まり、専用線と比較しても通信コストを大幅に抑えられることがわかっており、山田製作所のご要望に最適と考えIBM Cloudでの提案を 進めました。
山田製作所では、IBM Cloudのセキュリティーや運用体制などが同社の社内規定に適合するかを入念に調査。情報システム部門より"問題なし"との太鼓判を得て、 IBM Cloudベアメタル・サーバーと仮想サーバーの導入を決定します。
導入成果・現状 拠点間ネットワークの応答時間が5分の1に短縮し、パケットロスも30分の1に。
クラウドの選定後、山田製作所はまずフェーズ1としてIBM Cloudおよび文書共有システムの導入に着手。各拠点に段階的に導入しながら、作業を進めています。 現在は導入途中であるものの、「すでに米国とタイの拠点ではネットワーク速度が28%改善されています。中国拠点では応答時間が5分の1に短縮され、以前は約30%のパケットロスが 発生していたのが現在は1%程度にまで改善されました」(齋藤氏)と、速度と安定性の両面で大きな効果を実感。IBM Cloud上に移行したことで、文書共有システムによる拠点間の 開発テーマの共有もスムーズに行えるようになり「拠点間でデータを受け渡すためにファイルをコピーして連絡する手間がなくなり、1つのファイルをグローバルで簡単に共有 できるようになりました。ファイル共有で生じるストレスがゼロになり、本当に使いやすくなりました」と齋藤氏は言います。
将来展望・今後の課題 IoT技術を用いたスマート工場実現での活用も視野に
「IBM Cloudの採用はPLMシステム導入の大前提となる高品質な拠点間ネットワークの確立を意味していましたが、実際に期待どおりの速度と安定性を得ることができ安心しています」 と山田氏は言います。山田製作所では、すでにフェーズ2としてPLMシステムの導入にも着手しており、現在はIBM Cloud上に同システム用の環境を構築。2019年9月の利用開始を目指して、 自社要件に合わせたカスタマイズ作業を進めています。「PLMシステムの導入と活用が順調に進んだ暁には、その次の発展としてIBM Cloud上への生産管理システムの展開も視野に 入ってくるでしょう」(山田氏)
また、IBM Cloudの導入を知った他部門からも活用の相談が寄せられています。「当社の生産本部はIoT(Internet of Things)技術を用いたスマート工場の実現に向けた検討に着手し、 各拠点の生産設備で各種データの収集を開始しています。ただ、現在は取得したデータを生産設備に接続したPCのローカル・ディスクに保存しており、国内の生産本部から自由に見ることはできません。 そこで、このIoTデータをIBM Cloudの上に保管できないか相談を受けています。IBM Cloudの上にデータを溜めていけば、いずれIBM WatsonをはじめとするIBM Cloud上のAIやビッグデータ、 アナリティクスのソリューションを用いたさまざまな分析や活用に発展させられる可能性もあります」(齋藤氏)
将来的なデータ活用の可能性を広げるという面でも、IBM Cloudの選択は大きな価値を持つということです。山田製作所は今後、クラウドの潜在能力を見据えながら、活用レベルをさらに高めていく考えです。
お客様プロフィール
この事例の製品・サービスの詳細
IBM Cloud
柔軟性に富んだパブリッククラウドサービスを IBM Cloud にて提供いたします。
「クラウド」の他の導入事例
半田重工業株式会社
AWS上での
サービス提供に挑戦