IBM i(AS400)を中心に
業務をデジタル化
およびExcelでの検査成績書の
作成ミスを防ぐシステムをそれぞれ構築
- iPad(タブレット)
- IBM i (AS400)
- データ活用
- 熱処理加工業
事例のポイント
- グラフィカルなユーザーインターフェースの勤怠入力アプリを開発
- 現場が使い慣れているExcelでホストコンピューターのデータを利用
- 紙ベースで進めていた作業をデジタル処理に変えシステム化
お客様の課題【1】
株式会社TONEZ(以下、TONEZ)の事業である熱処理加工は、加熱および冷却によって金属材料の性質を向上させる加工方法です。工場の勤務体制は、熱処理炉の操業および管理のため3交替が基本です。このため、従業員の出退勤時刻を正確に、しかもできるかぎりリアルタイムに把握する必要があります。また、熱処理加工後には、処理済みの製品とともに加工品検査成績書を得意先に提出します。TONEZは、この勤怠入力および加工品検査成績書のそれぞれで課題を抱えていました。
TONEZは、同社向けにカスタマイズされたパッケージソフトウェアを使って勤怠入力システムを運用していました。しかし、出退勤の入力に使用するアプリケーションの対応OSがサポート終了となったため、新たに出退勤の入力方法を検討する必要が生じました。「使用していた勤怠入力のアプリケーションでは、バーコードスキャナーで社員コードを読み取り、直接IBM i(AS400)が動作するホストコンピューターに書き込む仕組みを取っていました。ただし、対応OSのサポートが終了してしまうため、勤怠入力システムに使用できる新たな製品を探していました」。しかし、TONEZの要求を満たす製品はなかなか見つかりませんでした。「市販の勤怠入力システムをいろいろと見たり情報を探したりしたのですが、どれもいったんPCに取り込んでからバッチ処理でホストコンピューターに転送するものでした。当社が求めていたものは、入力すると即座にホストコンピューターに書き込まれるものでした。これは、従業員の出退勤を管理者が別の場所でもすぐに確認できるようにしたいためです」。
お客様の課題【2】
また、熱処理加工後に製品とともに得意先に提出する加工品検査成績書の作成に関しても課題がありました。「基本的に、加工品検査成績書はホストコンピューターから、その管理している内容を出力して印刷しています。ただし、得意先によって、出力する項目や書式の要求が異なっています」。熱処理加工する品物の形状や処理内容によって、検査時の測定位置や断面での硬度の推移など得意先から要求される記載内容が異なります。このような得意先からの要求に応えるため、TONEZは、ホストコンピューターで管理している内容を基に、それぞれの得意先に合わせてMicrosoft Excel(以下、Excel)上で加工品検査成績書を作成し、処理済みの製品とともに納品していました。「この場合、検査結果を見ながら値を入力するので、入力ミスなどの間違いが生じるおそれがありました。また、加工品検査成績書の記載内容のチェックミスが生じる可能性もあり、誤った内容を得意先に届けてしまうおそれもありました。この課題も何とか解決したいと思っていました」。
課題解決のための選択
出退勤の入力方法に関してTONEZがベル・データに相談したところ、LongRangeを提案されました。LongRangeはIBM i(AS400)のシステム上で動作するプログラム言語RPGで、iOS、Android、Windows 10のネイティブアプリを作成できる製品です。TONEZは、LongRangeを採用して、新たに勤怠入力アプリを作成することにしました。「選定の理由は、IBM i が動作するホストコンピューターに直接データを書き込めることと、ユーザーインターフェースをグラフィカルに作り込めることです」。
また、加工品検査成績書に関する課題を解決するため、TONEZは、ベル・データの協力を得ながら、加工品検査成績書を出力するためのアプリケーションを新たに開発しようと考えました。しかし、得意先から新たな書式を要求されたときの対応や、大阪工場以外の他工場の要望を満たそうとすると、開発すべきアプリケーションは汎用性が高い一方で、TONEZ社内で対応できるものにしなければなりませんでした。アプリケーションの開発工数および将来展開に懸念を抱いたTONEZは、ベル・データからのもう1つの提案であったEVOLIOによって課題を解決しようと考え直しました。EVOLIOは、ホストコンピューターにアクセスして検索などを実行するデータセンター設定ツールと、Excel上でのフォーマットを簡単にデザインするためのExcelアドインで構成される製品です。「最終的に使用するのは各工場の担当者です。新たにアプリケーションを開発した場合、使い方を最初から覚えなければなりません。これに対してExcelは、使い慣れている社員が多いアプリケーションです。このため、シートを開いてボタンを押す、といった操作をお伝えするだけで使えます」。
導入のためのアプローチ
TONEZは、出退勤の入力端末にAppleのiPadを使い、LongRangeにより勤怠入力の方法を刷新しました。社員コードをQRコード化し、保守面からスキャナーを止めiPadのカメラで読み取るように変更、システムからのレスポンスも音声で返すようにしました。また、会社からの連絡事項の表示や、社員自らの操作で勤務状況が確認できるようにもしました。
また、TONEZは、ExcelとEVOLIOを組み合わせ、ホストコンピューターで管理しているデータから加工品検査成績書を直接作成する仕組みも構築しました。ベースとするひな形を作成しておくことで、それぞれの得意先からの要求に合わせて記載内容を展開できます。
株式会社TONEZ
ショットブラスト処理、太陽光発電および販売
株式会社TONEZは、熱処理加工の技術研鑽の道を一貫して歩み、独自設計の設備も使いながらオンリーワンの技術を蓄積して、自動車を中心に鉄鋼、建設機械、産業機械、航空宇宙産業に至るまで、広範囲の分野で「熱処理のTONEZ(トーネツ)」として国内外から高い評価を得ています。